自宅で作る本格ブンボーフエ――日本のスーパーで揃う材料で挑戦


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フエの人々が愛してやまない麺料理「ブンボーフエ(Bún Bò Huế)」。前回の記事では、その味の秘密であるサテ・レモングラス・マムルオックの三位一体について詳しく解説しました。今回はいよいよ実践編です。日本のスーパーやオンラインショップで手に入る材料を使って、自宅で本格的なブンボーフエを作る方法をステップバイステップでご紹介します。

「ベトナム料理を自宅で作るなんて難しそう……」と感じるかもしれませんが、実はブンボーフエの調理工程は、日本のおでんや豚骨ラーメンのスープ作りと多くの共通点があります。時間はかかりますが、特別な技術は必要ありません。週末の料理プロジェクトとして、ぜひ挑戦してみてください。


材料一覧(4人前)

スープの材料


材料分量日本での入手先
牛骨(ゲンコツまたは牛すね骨)1kg業務スーパー、ハナマサ、精肉店で取り寄せ
豚足(前足が理想)2本スーパーの精肉コーナー、業務スーパー
牛すね肉(または牛バラブロック)500g一般スーパー
レモングラス4~5本下記「代用品」参照
エシャロット(紫小玉ねぎ)4個一般スーパー(なければ玉ねぎ1/2個)
ニンニク1玉一般スーパー
生姜1かけ(50g)一般スーパー
4~5リットル

サテ(辛味オイル)の材料


材料分量日本での入手先
サラダ油100ml一般スーパー
アナトーシード大さじ1Amazon JP、アジア食材店
韓国産粗挽き唐辛子(コチュカル)大さじ3一般スーパーの韓国食材コーナー
レモングラス(みじん切り)2本分
ニンニク(みじん切り)3かけ
エシャロット(みじん切り)2個

味付け調味料


材料分量日本での入手先
マムルオック(Mắm Ruốc)大さじ1.5Amazon JP、ベトナム食材店
ヌクマム(ベトナム魚醤)大さじ3一般スーパー(ナンプラーで代用可)
砂糖大さじ1
適量


材料分量日本での入手先
ブン(ベトナム丸麺・乾麺)400gアジア食材店、Amazon JP

トッピング・薬味


材料分量日本での入手先
もやし1袋一般スーパー
青ねぎ(小口切り)適量一般スーパー
パクチー適量一般スーパー
ライム(またはレモン)1個一般スーパー
生唐辛子(薄切り)適量一般スーパー
大葉(しそ)またはバジル適量一般スーパー


材料の代用ガイド――日本で手に入らないものをどうするか

ブン(ベトナム丸麺)

ブンボーフエに使う麺は「ブン(Bún)」と呼ばれる米粉の丸麺で、フォーの平麺とは異なります。太さは日本のうどんとそうめんの中間くらいです。

入手方法:

  • アジア食材店:新大久保、鶴橋、中華街などで乾麺タイプが購入可能。
  • Amazon Japan:「bun kho」「ブン 乾麺」「ベトナム 丸麺」で検索。
  • 業務スーパー:ベトナム産のライスヌードルを扱っている店舗もあります。

代用品: そうめんやビーフンでは食感が全く異なります。できるだけ本物のブンを使うことをおすすめします。どうしても手に入らない場合は、太めのビーフン(センレック)が最も近い代用品です。

レモングラス

入手方法:

  • S&B食品のレモングラスペースト(チューブ入り):一般スーパーやカルディで購入可能。生1本分=ペースト小さじ2程度。
  • 冷凍レモングラス:アジア食材店で販売。生と同様に使えます。
  • 乾燥レモングラス:カルディやハーブ専門店で購入可能。お茶パックに入れて使います。

注意: レモングラスはブンボーフエの命です。省略せず、必ずいずれかの形で使用してください。

マムルオック(発酵エビペースト)

入手方法:

  • Amazon Japan:「mam ruoc」「マムルオック」「ベトナム エビペースト」で検索。Bà Giáブランドなどが定番です。
  • ベトナム食材オンラインショップ:Vietmart Japan など。
  • 新大久保・鶴橋のベトナム食材店

代用品: 韓国のアミの塩辛(새우젓・セウジョッ)大さじ1で近い効果が得られます。マレーシアのブラチャン(Belacan)も代用可能です。

牛骨

日本のスーパーでは牛骨はあまり見かけませんが、以下の場所で入手できます:

  • 業務スーパー(Gyomu Super):冷凍の牛骨を扱っている店舗があります。
  • 肉のハナマサ:業務用精肉店で、牛骨の取り扱いがあります。
  • 地元の精肉店:事前に電話で取り寄せを依頼できます。
  • ネット通販:「牛骨 スープ用」で検索。

代用品: 牛すね肉を多めに使い、牛テールがあれば加えると骨髄の旨味が出ます。


調理手順

【前日準備】牛骨の下処理(所要時間:30分+一晩)

  1. 牛骨を流水でよく洗い、大きなボウルに入れて水に浸し、冷蔵庫で一晩置く。水を2~3回替えると血抜きがしっかりできます。

> ポイント: この工程は日本のラーメン作りの「血抜き」と同じです。透き通ったスープを作るために欠かせません。

【ステップ1】下茹で(所要時間:20分)

  1. 大きな鍋に牛骨と豚足を入れ、たっぷりの水で強火にかける。
  2. 沸騰したら5分間茹でる。大量のアクが出ます。
  3. 湯を全て捨て、牛骨と豚足を流水で丁寧に洗う。鍋も洗う。

> ポイント: この「下茹でと洗い」は、豚骨ラーメンの下処理と全く同じ原理です。不純物を除去し、澄んだスープの土台を作ります。

【ステップ2】スープを煮込む(所要時間:2~3時間)

  1. 洗った鍋に牛骨、豚足、牛すね肉を入れ、水4~5リットルを注ぐ。
  2. レモングラス3本を包丁の腹で叩いて潰し、2つに折って鍋に入れる。
  3. エシャロット(皮をむいて丸ごと)、生姜(半分に切って潰す)、ニンニク3かけ(潰す)を入れる。
  4. 強火で沸騰させ、アクを丁寧に取る。
  5. 弱火に落とし、蓋を少しずらして2~3時間煮込む。

> ポイント: 弱火でコトコト煮ることが、澄んだスープの鍵です。グラグラ煮立たせると白濁します。日本のおでんを煮るときと同じ感覚です。

  1. 1時間半ほどで牛すね肉に竹串がすっと通るようになったら取り出し、冷ましてからスライスしておく。豚足も柔らかくなったら取り出す。

【ステップ3】サテを作る(所要時間:15分)

スープを煮込んでいる間に、サテを準備します。

  1. 小鍋にサラダ油100mlとアナトーシードを入れ、弱火で3~4分加熱する。油が赤く色づいたら、アナトーシードを取り出す。

> アナトーシードがない場合: パプリカパウダー大さじ1で色を、一味唐辛子で辛味を代用できます。

  1. このアナトー油にみじん切りのニンニク、エシャロット、レモングラスを入れ、弱火で5分ほど炒める。焦がさないこと。
  2. 火を止めてから韓国産粗挽き唐辛子を加え、混ぜ合わせる。

> ポイント: 唐辛子粉は余熱で加熱します。直火にかけると焦げて苦くなります。

  1. 完成したサテは小瓶に移し、冷蔵庫で1ヶ月保存可能です。

【ステップ4】スープの味付け(所要時間:15分)

  1. 煮込んだスープから牛骨、レモングラス、生姜、エシャロットを取り出す。
  2. マムルオック大さじ1.5を小さなボウルに取り、スープ少量(おたま1杯分)で溶かす。茶漉しで漉しながらスープに加える。

> ポイント: マムルオックを漉すことで、固形物が除かれ、旨味だけがスープに溶け込みます。これがプロの技です。

  1. ヌクマム(魚醤)大さじ3、砂糖大さじ1、塩適量で味を整える。
  2. サテを大さじ2~3、スープに溶かし入れる(残りは食卓で各自追加)。
  3. さらに10分ほど煮込んで味を馴染ませる。

【ステップ5】麺を茹でる(所要時間:10分)

  1. 大きな鍋にたっぷりのお湯を沸かす。
  2. 乾燥ブンをパッケージの指示に従って茹でる(通常5~8分)。
  3. 茹で上がったらザルに取り、冷水でさっと洗ってぬめりを取る。

> ポイント: ブンは茹ですぎると溶けるように柔らかくなります。アルデンテを意識して、少し硬めに茹でるのがコツです。

【ステップ6】盛り付け(所要時間:5分)

  1. どんぶりにブンを入れる。
  2. スライスした牛すね肉、豚足を盛り付ける。
  3. 熱々のスープをたっぷり注ぐ。
  4. サテを小さじ1~2、表面に乗せる。
  5. 青ねぎ、パクチーを散らす。
  6. もやし、ライム、生唐辛子、大葉を別皿で添える。

自家製トッピングに挑戦

チャークア(Chả Cua・蟹入りさつま揚げ)

ブンボーフエの定番トッピングの一つが、チャークアです。蟹の身を混ぜ込んだすり身揚げで、スープに浸すと旨味がさらに広がります。

簡易レシピ(日本の材料で):

  1. 白身魚のすり身(はんぺんでも可)200gをボウルに入れる。
  2. カニかまぼこ100gを細かくほぐして加える。
  3. 卵1個、片栗粉大さじ1、ヌクマム小さじ1、胡椒少々を加えて混ぜる。
  4. ラップで太い棒状に包み、蒸し器で20分蒸す。
  5. 冷めたら1cm厚さにスライスし、スープに入れる。

> 日本のさつま揚げとの違い: チャークアは揚げずに蒸すのが基本です。食感はかまぼこに近いですが、カニの風味が加わることでスープとの一体感が生まれます。

ジョーヘオ(Giò Heo・豚足)

豚足はスープの材料としてだけでなく、トッピングとしても重要です。

  1. ステップ2で煮込んだ豚足を取り出す。
  2. 骨から肉を外し、食べやすい大きさに切る。
  3. コラーゲンたっぷりのプルプルした食感が、スープのアクセントになります。

日本で豚足に抵抗がある方は、豚バラ肉のブロックを代わりに煮込んでも美味しくいただけます。


付け合わせの野菜――日本で揃える工夫

ベトナムでブンボーフエと一緒に出される野菜は、大きな皿に山盛りで提供されます。日本では手に入りにくいものもありますが、工夫次第で近い体験ができます。

もやし(Giá Đỗ)

最も簡単に手に入る付け合わせ。生のまま、またはさっと熱湯をかけて添えます。

空心菜(Rau Muống)

ベトナムでは定番ですが、日本ではやや入手困難です。

代用品:

  • 豆苗(とうみょう):シャキシャキした食感が近い。一般スーパーで手軽に購入可能。
  • 水菜:さっぱりした味わいがスープと合います。
  • 小松菜:さっと茹でて添えれば、栄養面でも優秀。

バナナの花(Hoa Chuối)

フエでは薄切りのバナナの花がよく添えられますが、日本ではほぼ入手不可能です。

代用品: みょうがの千切り。独特の香りと食感が、バナナの花に近い役割を果たします。

ハーブ類

  • バジル(Húng Quế):一般スーパーのイタリアンバジルで代用可能。タイバジルがあればより本格的。
  • しそ(Tía Tô):実はベトナムでもしそ(紫蘇)が使われます。日本のしそがそのまま使えます。
  • パクチー(Ngò):一般スーパーで購入可能。

時短テクニック――インスタントを活用する方法

「牛骨を煮込む時間がない!」という方のために、時短テクニックもご紹介します。

方法1:インスタントスープの素を使う

ベトナムの食品メーカーが出している「ブンボーフエの素」を使えば、スープ作りが大幅に短縮できます。

  • Vifon(ヴィフォン)ブンボーフエ:インスタント麺タイプ。スープの素だけ活用し、麺は本物のブンを使うハイブリッド方式。
  • Bà Ngoại(バーゴアイ)ブンボーフエペースト:ペーストタイプの調味料。お湯に溶かすだけでベースが完成。
  • COOP ブンボーフエスープの素:粉末タイプ。

これらはAmazon JPやアジア食材店で購入できます。「bun bo hue paste」「ブンボーフエ 素」で検索してみてください。

方法2:牛骨なしの簡易版

牛骨が手に入らない場合の代替法です:

  1. 牛すね肉500gと豚バラ肉300gを水3リットルで煮込む。
  2. 市販の牛骨スープの素(顆粒)大さじ1を追加。
  3. レモングラス、マムルオック、サテは通常通り使用。

完全に本格的とは言えませんが、十分に美味しいブンボーフエが作れます。

方法3:圧力鍋で時短

圧力鍋を使えば、2~3時間の煮込みが30~40分に短縮できます。

  1. 下茹でした牛骨、豚足、牛すね肉、香味野菜を圧力鍋に入れる。
  2. 水を入れ(鍋の容量の2/3まで)、高圧で30分加圧。
  3. 自然放置で圧を抜き、あとは通常の味付けへ。

よくある失敗と対処法

スープが濁る

原因: 強火で煮すぎている。
対処: 下茹で後は必ず弱火で。蓋を完全に閉めず、少し開けておく。

スープに深みがない

原因: マムルオックが足りない、またはサテを入れていない。
対処: マムルオックを少しずつ追加。サテは見た目だけでなく、味の要です。

臭みがある

原因: 牛骨の血抜きが不十分、またはマムルオックを漉していない。
対処: 牛骨は必ず一晩水に浸ける。マムルオックは茶漉しで漉してから使う。

麺がベタベタする

原因: 茹ですぎ、または冷水で洗っていない。
対処: 茹で時間を短めにし、ザルに取ったらすぐ冷水で洗う。

辛すぎる

原因: サテを入れすぎた。
対処: サテは最初は控えめに。食卓で各自追加するスタイルにする。


完成!――食卓での楽しみ方

ブンボーフエは、食卓での「カスタマイズ」こそが醍醐味です。ベトナムの食堂では、テーブルの上に以下が必ず用意されています:

  • サテ(追加用):辛さは自分で調整
  • ライムまたはレモンのくし切り:酸味でスープの味変
  • 生唐辛子の薄切り:さらなる辛味を求める人に
  • ヌクマム:塩味の調整
  • もやし・ハーブ類:たっぷり入れて食感と香りを追加

日本のラーメンが「出てきたらそのまま食べる」文化であるのに対し、ブンボーフエは「自分で完成させる」料理です。この参加型の食体験こそが、ブンボーフエの楽しさの一つです。

まずはスープを一口すすって味を確認し、ライムを絞り、もやしとハーブを投入し、サテを好みの量だけ追加する。この一連の儀式を楽しんでください。


まとめ

日本の台所でブンボーフエを作ることは、決して不可能ではありません。牛骨、レモングラス、マムルオック、サテ――これらの材料は確かに日常的ではありませんが、インターネットやアジア食材店を活用すれば十分に手に入ります。

そして何より、一度自分で作ってみると、ブンボーフエの味の奥深さが身体で理解できます。なぜレモングラスが必要なのか、マムルオックがどれだけ味を変えるのか、サテの赤い油がどれほどの情熱を持っているのか。

週末のプロジェクトとして、ぜひ挑戦してみてください。キッチンに立ち上るレモングラスと牛骨の香りが、あなたをフエの路地裏に連れて行ってくれるはずです。


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